アクセス解析ツール4社が集結!競合同士でインバウンドマーケティング討論(前編)

BtoBのインバウンドマーケティングを実践するにあたって、Webアクセス解析ツールをどのように活用するべきなのか。今回は、Webアクセス解析ツールベンダー4社にお集まりいただき、それぞれの立場からの意見を聞いた。

※この記事は旧ブログ「INBOUND marketing blog」から移行したものです。

【目次】


参加いただいた方々

小坂淳氏株式会社環
取締役 小坂淳氏

 

岩本 庸佑氏株式会社ギャプライズ
テクノロジー・ソリューション事業部 エヴァンジェリスト 岩本 庸佑氏

 

小原良太郎氏株式会社Ptmind
co-founder 事業戦略部部長 小原良太郎氏

 

西川ジョニー雄介氏株式会社アッション
執行役員 西川ジョニー雄介氏

 

小林利光氏 株式会社アッション
新規市場開拓室長 小林利光氏

 

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前提として…各社サービスの詳細

中村:まずは各社のツールについて簡単にご紹介ください。

岩本氏:株式会社ギャプライズでは、解析ツールのクリックテールを中心にWebマーケティングツール3つを提供しています。クリックテールは、これまでヒートマップ解析ツールという位置付けでしたが、これからはWebサイトのページ内解析ツールという枠組みで提供していきます。

小原氏:株式会社Ptmindは、Ptengineを通して、ヒートマップ解析機能、Webアクセス解析の両方を提供していますが、目指すのは、データを元にビジネスを改善し動かすことです。データがあっても分析するまでの過程が難しいと時間がかかってしまうので、ツール側で面倒な部分は対応して、解析を簡略化します。

小坂氏:株式会社環では、自社開発のシビラとシビラ・メールソナーを提供しています。特徴としては3つあり、まずは知識がない人でも解析データを見られること、2つ目が問い合わせが来た時にその経路を追ってどうして問い合わせたのかユーザの心理を読むような機能があること、そしてメールをトリガーにした解析が可能で誰がどんなコンテンツを見たかが追跡できることです。シビラはマーケターだけでなく、営業担当もデータを見てその後のアクションにつなげられるようにしています。

小林氏:株式会社アッションではA/BテストツールのVisual Website Optimizerを提供しています。Webサイトやランディングページの最適化のためのツールで、当社がインドの開発元企業Wingifyと独占契約を結んでおり、カスタマイズなども積極的にやっています。A/Bテストは時間と工数がかかること、そして出てきたデータをどう活用するかという課題がありますが、この部分を簡単かつ確実にするためのツールとなっています。


失敗するコンテンツマーケティングはマーケターだけで完結している

中村:今日はよろしくお願いします。
最近、インバウンドマーケティングの施策の一つであるコンテンツマーケティングが流行しています。BtoBで取り組む際に、どこに着目して取り組み、どう解析していく必要がありますか。


小原氏:
コンテンツマーケティングは時間のかかる施策ですので、ある程度運用したあと、集客、ダウンロード数、問い合わせ数を計測し、CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)を評価する必要があります。比較してみたらセミナーを開催したり、展示会に出展したりしたほうが楽だということもあるので、他の施策と比較して費用対効果を検証するべきですね。

必ずしもコンテンツマーケティングの導入が必要なわけではないと言うPtmind・小原氏

中村:コンテンツマーケティングを採用するかどうかの判断は?

小原氏:週1回アップするとして、オリジナリティがあり、ターゲットとなる人を集客できるコンテンツを1年分用意できるかということですね。

岩本氏:どんなマーケティング施策にせよ、自社の製品、サービスがクライアントの検討時に候補として並べられるようになることが重要です。

中村:お問い合わせが来て売上を上げるという点について、LPOの視点ではいかがですか。

お問い合わせ獲得についての質問をする中村

小林氏:Webサイトやランディングページ解析という点では、母数が大きい分、BtoCのほうが効果は高いですね。BtoBの場合は、その後の営業との連携が重要で、ランディングページにも営業が聞いたお客様の声を盛り込んでいく必要があります。事例を載せるにしても、大手がいいのか、業種をそろえるほうがいいのかというのは、マーケティング担当だけでなく、営業の視点も欠かせません。

例えば、弊社のLPでは、競合との比較表を掲載していますが、これはWEB担当者が上司から「A/Bテストツールを探しといてよ」と依頼された時に、「A/Bテストツール 比較」といったキーワードで検索して弊社サイトへと訪問することを想定しており、その中で他ツールとの違いを訴えています。ランディングする前のユーザの状況や心理状態、自然検索でランディングした後の動線を意識したコンテンツづくりを心がけています。

コンバージョンした理由を箇条書きにして、取捨選択して必要な物をランディングページのコンテンツに盛り込むのが基本ですね。

ユーザの検索するキーワードに合わせたLPの重要性を説くアッション・小林氏

中村:シビラではいかがでしょうか。

小坂氏:クライアント企業を見ていると、社内が分断されていてシナリオが共有されていないところが見受けられます。コンテンツは営業の協力が必須です。マーケティングだけだと問い合わせの数だけを見てしまい、営業から見ると質が悪いということにもなりかねません。

西川氏:解析の設計では、CPAのAcquisition(獲得)を何に設定するか、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)をどう設計するかがBtoBにとっては重要です。弊社でも、最初の取っ掛かりとしてランディングページの制作は安価にお引き受けして、その後の長いお付き合いで売上を回収していくことがあります。ランディングページだけでみたら当社の利益はさほど出ないのですが、その後のお付き合いで売上を最大化していきます。


ソーシャルの拡散後、SEO対策としてやるべきこととは

中村:BtoB企業が解析ツールを導入するとき、どういうポイントで解析をして、どんな値を見るべきでしょうか。

小原氏:アクセスだけでなく、記事の質、コンバージョンですね。釣りタイトルでPVだけよくてもしょうがないですから。読者の啓発、問題解決につながる質のよい記事が作れたかどうかは、ヒートマップで記事がどう読まれたか、スクロールされたかで解析できます。

岩本氏:コンテンツマーケティングは1つ大作を出すのではなく、継続してコンテンツを出し続ける必要がありますが、そのためには効率化して仕組み化しなければいけません。仕組み化も間違った仕組みではなく、勝ちパターンの仕組化が必要で、そのためには、A/Bテストをしながら、同じテーマでも見せ方、訴求軸から変えていくべきです。トライアンドエラーを繰り返して。さらにクリックテールがあると確度の高いトライアンドエラーが実装可能です。時間をかけている最中もコストは発生するので、確度を高めて、スピードを速めるのが重要だと思います。

自社ブログで作っているルールの1つはリード文に全力を注ぐ!ということです。リード文の良し悪しで続きの読まれ方も変わるので、ユーザが共感したりと驚いたりするような、つまり訴求感があるように作るようにしています。この辺りはクリックテールのデータを見ることでルール化した1つです。こういったデータに基づいたルールができれば組織の中で誰でも書ける仕組みができます。コストの高い人が書き続けるのではなく、仕組化、組織としての効率化ができてきます。

コンテンツマーケティングの導入は仕組み化が重要と話すギャプライズ・岩本氏

西川氏:弊社の例でも、FacebookとTwitterでシェアするときに、タイトルやリード文、写真を変えて効果を比較することもあります。また、ブログの記事一覧ページでの記事へのクリック率が悪ければ、写真、タイトルを変更するということもします。

タイトルについては、公開数日はソーシャルメディアで拡散しやすいタイトル、数日経過したら検索エンジンで検索されやすいタイトル、クリックされやすいタイトルに変更します。


BtoBマーケターが磨くべきスキルとは

中村:サイト全体の導線のチェックなどはいかがですか。

小坂氏:BtoBの場合、まずはWebサイトに来てもらうのが重要ですが、何度か来ているのにコンバージョンしない人がいます。コップの水があふれそうなところまできているのにコンバージョンしない場合、仮説を立ててコンバージョンする人としない人の経路を比較してみると原因が分かることがあります。

コンバージョンする人の経路の分析の重要性を話す環・小坂氏

中村:マーケターは仮説を立てた分析、改善のステップをまわせなくて悩んでいる方もいると思いますが、どうしたらよいのでしょうか。

岩本氏:仮説はマーケターのセンスや経験が大きいですが、まずポイントを抽出するなら、新規と再訪、コンバージョンユーザと非コンバージョンユーザ、チャネル別などセグメントして差異を見つけるといいと思います。その差異を埋めていく施策がテストの要件になります。

中村:BtoBの場合、母数が少ない企業も多くセグメントしにくい部分もありますが、その点の対応は?

小林氏:セグメントしにくい場合、解析からの改善施策考案という観点では面白みに欠けるかも知れませんね。しかし一方で、対象セグメントへの予算の集中投下やKPIの明確化により、シンプルなデータを用いて改善プロセスを構築することができるので、社内に解析から改善のPDCAサイクルや、A/Bテストの文化を根付かせやすいかも知れません。

西川氏:ただデータドリブン(データを基に施策を進めていくこと)での解析データに頼りすぎるのも危険だと考えています。定性データと定量データがありますが、ツールで定量データが取れるとすると、お客様の生の声が定性データです。定量データに現れないところに改善のポイントがあることもあります。

弊社では以前1ヶ月無料トライアルを提供していましたが、今ひとつ伸びないので、お客様に聞いてみたところ、1ヶ月では何もわからない、有料でいいから3ヶ月使って効果を検証したいと言われました。そこで、格安で3ヶ月提供するようにしました。無料トライアルが上手くいかない理由は定量データでは分からなかったので、定性データを集め仮説を立てて、その上で定量データから効果検証するという流れが重要ですね。

定量データだけではなく、定性データとの掛け合わせについて説明するアッション・西川氏

小坂氏:BtoBのマーケターは、営業にどんなデータを渡したら喜ばれるかを考えるといいかもしれないですね。ただ、1人で考えていると浮かばないので、外部のコンサルや他の部署の人に相談できるといいですよね。自分がコンサルする時は、提案をするというよりも、担当者が思っていること、考えていることを引き出すという面があり、そういう役割は大事です。


A/Bテストはコンバージョンの近いところから試せ!

中村:A/Bテストをするときは、初めての人はどこから手を付けたらいいのでしょうか。

西川氏:コンバージョンの直前の部分ですね。例えば、入力フォーム、資料のダウンロードバナーなど、ゴールから逆算して一番近い部分、まさに水が溢れる直前の場所から分析するといいと思いますよ。

岩本氏:ゴールに近い部分は一番結果が出やすいので楽しくて継続したくなりますしね。まずは楽しいところ、やりたいところをやってみればいいと思います。が、その際に全流入ユーザにやるのではなく、流入の5%、10%を対象にテストするというようにリスクヘッジをして、効果が良ければ全体に適用するといいでしょう。テストなので仮説が外れることもあっていいと思います。その際は仮説が外れたらその原因を考えて、再トライすればいいのです。

またボタンの色などのデザインばかりに目がいくこともあると思うのですが、特にランディングページの場合はコンテンツの中身、訴求軸など全体の設計を重視するべきですね。その上で、訴求軸ではなく表現方法としてボタンのテキストや色などを試してみるのがよいと思います。

白熱の議論の現場・ガイアックス会議室

小原氏:WebでのA/Bテストの結果はノウハウの1つになるので、チラシなどにも他のところにも活かしていくといいですよね。


ヒートマップをどう読みとくか?ヒートマップの罠に注意

中村:ヒートマップのメリットはどこにありますか?

小原氏:ヒートマップでは、問い合わせをする人がどのコンテンツを見ているのか分かるところに価値があります。

西川氏:ただヒートマップは解釈が肝でいろいろな解釈ができるので、罠もあると思います。ページ内での滞在時間が短いからといって、ユーザにとって不要なコンテンツ、とは判断できません。

ヒートマップでよく読まれているから重要と考えて、そこに力をいれることもありますが、コンバージョンした経緯をお客様にヒアリングしてみるとヒートマップで読まれていないと分析されていた個所がお問い合わせの決め手となっていることがあります。実際に理由を聞いてみると「認知度が低いので心配だったが、事例で大手企業の担当者が比較した上で決めたという話があったから問い合わせをした」ということがありました。

読まれていないコンテンツでも成約のために重要なコンテンツであれば、もっと読まれるように写真を大きくしたり、ページ内リンクを増やしたりして読まれるようにすることで成約率が上がることがあります。

次回はさらにBtoBにおけるインバウンドマーケティングに斬り込み、今後のBtoBマーケターが抑えておくべきトレンドについても紹介します。

後編はこちら


参加者プロフィール

小坂淳氏株式会社環
取締役 小坂淳氏

銀行勤務や起業の経験を経て、2000年に環を創業。2001年にアクセス刑事、2004年にシビラを開発・発売開始。
BtoB中心にウェブ解析のコンサルティング等を行う傍ら、2010年のウェブ解析士立ち上げに参画。ウェブ解析士マスターとしても活動。
一般社団法人ウェブ解析士協会 事務局長を兼務。

 

岩本 庸佑氏株式会社ギャプライズ
テクノロジー・ソリューション事業部 エヴァンジェリスト 岩本 庸佑氏

クリックテール事業の創業メンバーとしてジョイン。クライアントワークにおいてクリックテール、Google Analytics、テストツールを活用したコンサルテーションサービスを多数提供。
adobeジャパン共催セミナー、デジタルハリウッド大学、旧アクセス解析イニシアチブ (旧a2i))において、ヒートマップセミナー講師として登壇。他多数。GAIQホルダー。

 

小原良太郎氏株式会社Ptmind
co-founder 事業戦略部部長 小原良太郎氏

ヒートマップ分析も可能なデータアナリティクスツール「Ptengine」をグローバルに提供する株式会社Ptmindの創業メンバー。元々は知識Q&Aサイトを運営するOKWaveにてQ&Aプラットフォームのアライアンス提供と広告を担当。
その後、2010年に株式会社Ptmindの創業に参画。現在は事業戦略部としてマーケティングやアライアンスを統括。

 

西川ジョニー雄介氏株式会社アッション
執行役員 西川ジョニー雄介氏

新卒入社した株式会社モバイルファクトリーでソーシャルアプリのプランニングを担当し、A/Bテストの魅力を知る。2012年12月アッションに移りすぐに、A/Bテストをどんな企業でも即実施可能にするA/Bテストツール”Visual Website Optimizer”に出会い感銘を受け、同ツールを活用したコンサルティング事業を立ち上げる。
現在は大手企業向けコンサルティングの他、同事業のマーケティング・広報・採用も行う。

 

小林利光氏 株式会社アッション
新規市場開拓室長 小林利光氏

「世界のどこでも通用するビジネスマンになること」を目標としアッションに入社。入社直後、自社ポータルサイト「プリスクールナビ」の広告営業リーダーを務め、クライアント数3倍、利益4倍にまで成長させる。
その後LPOコンサルティング事業の立ち上げに参画。A/BテストツールVisual Website Optimizerの導入企業増加の為の自社マーケティング活動、営業活動を行う傍ら、解析ツールを用いた、コンサルテーションサービスで、多数クライアントの売上増加に貢献。
高校時代には山梨県代表としてサッカー全国大会に出場した。

 

中村竜次郎株式会社ガイアックス
INBOUND marketing blog 編集長 中村竜次郎

広告制作にコピーライター、ディレクターとして携わり、2011年に株式会社ガイアックスのインバウンドマーケティング事業に参画。徹底した調査分析と企画設計、投資費用を回収し利益化するまでのKPI策定、コピーライティングとディレクション、リード獲得から受注支援まで、Webマーケティングを概念、実務レベルで支援する。


<執筆>

深谷歩株式会社 深谷歩事務所
代表取締役 深谷歩

ソーシャルメディアやブロクを活用したコンテンツマーケティング支援を行う。Webメディア、雑誌の執筆に加え、講演活動、動画制作も行う。またフェレット用品を扱うオンラインショップ「Ferretoys」も運営。

著書
『小さなお店のLINE@集客・販促ガイド』(翔泳社)
『SNS活用→集客のオキテ』(ソシム)
『小さな会社のFacebookページ制作・運用ガイド』(翔泳社)
『小さな会社のFacebookページ集客・販促ガイド』(翔泳社)