WebサイトのCRM連携でBtoBの営業活動はどう変わるのか(インタビュー)

インタビュー, ブログ

コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティング、広告戦略など、広くデジタルマーケティングの支援をする株式会社TAM。
2015年9月には、CRM連携など次世代デジタルマーケティングに注力する専門集団として株式会社タンバリンを分社化しました。
今回は、そのタンバリンを率いる中尾氏と、プロジェクトマネージャーの野口氏にBtoBマーケティングで注目されるWeb連携のCRM活用と今後の展望についてお聞きしました。

【目次】


プロフィール

中尾 達也 氏
株式会社タンバリン
代表取締役
デジタルプロダクション株式会社TAMのテクニカルディレクターを経て、2015年9月に同社子会社となるタンバリン(tambourine.inc)を設立。クラウドプラットフォームを活用したコンシューマ向けWebサービス開発やマーケティングオートメーションの導入などを多数手掛ける。

 

野口 栄晴 氏野口 栄晴 氏
株式会社タンバリン
プロジェクトマネージャー
2014年より株式会社TAMに入社。その後、クラウドプラットフォームを活用したソリューションを展開するtambourine.incへ転籍。Salesforceが提供しているビジネスアプリケーション向けのクラウド・プラットフォーム「Force.com」、マーケティング・オートメーション「Pardot」の導入・運用支援から、Heroku環境でのカスタムアプリケーションの開発案件を手がける。

 

インタビュアー
株式会社ガイアックス ビジネスマーケティング事業部 事業部長 中村 竜次郎


パートナー型デジタルプロダクション・TAMとは

中村:関西を中心に大手のお客様とお付き合いをされていますが、貴社の強みはなんでしょうか。

中尾氏:いわゆる“構築しっぱなし”ではなく、運用や施策の領域まで踏み込んでいる点にあります。しっかりとクライアントに寄り添って、深部までサポートさせていただいていることから「パートナー型デジタルプロダクション」と自分たちでは言っています。
そのTAMから2015年9月にスピンオフしたのが株式会社タンバリンです。タンバリンでは特に先進的な技術やマーケティングツールの活用に重きを置いたWebサービスの構築から運用を支援しています。
例えばセールスフォースドットコム社と組み、同社のCRMと連携させたWebサイト構築と、その運用を手がけています。

パートナー型デジタルプロダクション TAMのWebサイト

中村:御社のようにCRMの提案ができてWebサイトやコンテンツの制作ができる企業はそれほど多くないように思えます。
クライアントが元々活用していたCRMと連携させるWebサイト構築と、導入前提でのWebサイト構築のお仕事は、どちらが多いのですか。

中尾氏:私の経験上、前者ですね。元々CRMを利用している企業に踏み込んでいくことが多いので、クライアントの営業フローが決まっている状態に、Webサイトを連係させるケースが多いです。Webサイト構築時の制約が多くなるため、課題をどう解消していくかが大事になります。
逆にゼロからご提案するケース、例えばWebサイトにマーケティングオートメーションから見込み顧客管理までのCRM領域を求められる場合は、優先順位を付けて、マーケティングオートメーションやSFAの導入をフェーズに分けて導入していきます。

企業によってはデジタルマーケティングへの考え方やリテラシーに差があります。例えば、ある大手企業の例ですが、部署ごとに縦割りで、営業の方は昔ながらの人間関係を重視する社風でした。そういった環境に先進的かつ合理的なものを取り入れていくと、今までの営業フローと噛み合わず、社内の理解を得るのに時間が掛かかるものです。設計も複雑になっていきます。そのため、一気に導入を進めるのではなく、フェーズを切って、導入を進めるのが大事です。


CRM導入の成功は、現場レベルにそのメリットをイメージさせられるか

中村:CRMに対するクライアントの営業の反応はいかがですか。

中尾氏:営業の方がCRMを使ったことがなかったり、使い慣れていなかったりする企業にはやはり苦労します。エクセルでの管理が当たり前になっている企業は、その良さが分からずに手を出さないというケースもあるものです。

セールスフォースドットコムのご担当者が「営業のために必要な情報をCRM側に置いて、それを見ると受注しやすくなるように設計することが大事」と言うように、その考えを理解してもらうようにしています。営業の方が「これを使えば受注が増える」と思ってもらえたら、積極的に協力が得られるわけですから。

例えば、マーケティングオートメーションツールと連携することができれば、案件化している見込み顧客のWebサイト上での行動履歴を把握できます。
見込み顧客が興味をもっているページを確認することができるため、営業マネージャーの方がミーティングで、「この辺りを深掘りできるのではないか」とアドバイスできる環境をCRM上で確認できます。マーケティングと営業の連携が強化され、さらに受注が増えていくという好循環が生まれるのです。

「CRMはしっかり入力することを目標設定の一つとして入れない限りは、なかなか組織に浸透しない」と語る中尾氏

中村:そういった領域まで踏み込んでフォローするのは大事ですよね。

中尾氏:アドバイスさせていただく程度です。運用時にCRMのインプリメンテーション(「導入/実装)もするのですが、組織の文化であったり、もともとある事業部ごとの壁みたいなものなどを加味しながら対応していったりする必要があります。しっかりコンサルティングするとなると、短い期間では終わりません。その領域には、少なくとも営業の本部長、場合によっては社長に出てきてもらわないと浸透しないものです。

中村:今からCRMを導入しようと考える企業には、どのように提案されるのでしょうか。

中尾氏:そこは少し声を大きくして言いたいのですが、ツールありきではなく、あくまで成果を出すためのソリューションとして成立するかで考えるべきです。クラウドのSFAがいいとかではなく、やはりお客様がやりたいことベースで、かつ成果が出そうなことを小さくやっていく、少しずつ広げていくのが重要です。

中村:おっしゃる通りですね。

中尾氏:最近注目されている「グロースドリブンデザイン」という考え方が当てはまるかと思います。成長に応じて改修を繰り返していく考え方ですね。
大きなプロジェクトの全体を設計して構築、リリースという従来の手法だと、相当な期間がかかります。リリースする頃には市場が変化していて、時代遅れになっている可能性があるわけです。

クラウドサービスは登録したその瞬間から使えるものがほとんどです。そういったツールをAPIなどで連携させていけば、マーケティングツールであれWebサービスであれ、ゼロから構築するよりも、はるかに効率的で安価に、必要なものを実装できるのです。今後、多くの領域で、このような動きは進んでいくでしょう。


CRMを活用したBtoB事例をご紹介

中村:貴社が手がけたBtoBの事例があれば、お聞かせいただけますか。

中尾氏:日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の事例があります。能率手帳(NOLTY)を販売されている企業ですが、人材育成事業などを企業や官公庁向けに提供していらっしゃいます。元々SFAが導入されていて、Webサイトから獲得した見込み顧客の情報を繋ぐお仕事でした。ソーシャルメディアの活用など、色々な施策に挑戦しています。ご担当の方とお話しながらフォームや申し込み後のフローの最適化などを実施し、リード獲得数を増加させました。

「人・組織・経営の変革」を支援する日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)のWebサイト

究極はマーケティングのソリューションのセルフサービス化

中村:貴社は市場の中でどういう立ち位置でありたいと考えていますか。

野口氏:どちらかと言うと、もう少し先鋭的な取り組みをしていきたいですね。これってビジネスに意味あるのかな?みたいなWebサービスを作るなど、先端を走る企業でありたいと考えています。

中村:それはクライアントのニーズをもとに発案していくのですか。

野口氏:ほとんどそうですね。クライアントのアイデアの種みたいなものに対して、これをやりましょうというものを提案していくのが僕らのスタイルです。

たとえば、当社とC4株式会社で共同開発した『現場の神様』というWebサイトが一例です。
C4株式会社は施工管理技士を中心とした建設技術者の採用マーケティングを行っている企業ですが、「求人の獲得は問題ないが、これから求職者となりうる予備軍の方々と常に接点を持ち続ける、そういうタッチポイントが欲しい」という発想から、コミュニティサイトのプロジェクトがスタートしました。

普通だったら求人に結び付くサイトを作るところですが、いわゆる実際の求人には直結しないけど、そもそも施工管理技士という限られた人材にアプローチするためにどのようなサービスを提供するのがいいのかというのを考えて、「こんなんやりたいんだ」、「それおもしろいっすね」という感じで話が進みました。CRMがすでに導入されていたため、連携を考えたコミュニティサイトを構築しました。

施工管理技士の、施工管理技士による、施工管理技士のための、情報共有サイト「現場の神様」

中村:最後に、今後の展望についてお聞かせください。

中尾氏:『現場の神様』は、BtoCですけれども、BtoBの領域でも、対面するのは人、つまりCです。クライアントにとっての顧客と接点を持つWebサイトやWebサービス、プロダクトを作るだけでなく、そこから得られた情報をCRMに蓄積し、その後のコミュニケーションが円滑になるような仕組みを作って行きたいとおもいます。
単純なリードを取るというだけではない、Webだからこそ可能な先鋭的な方法を見つけていきたいですね。

中村:本日はお忙しい中、ありがとうございました。