メールを使って「見込み顧客を商談テーブルに載せる」には?

BtoB企業において、メールマーケティングというと、メールマガジンの定期的な発行をまずはイメージするかもしれません。ただ、一口にメールマガジンといっても、配信システムの選定や編集スタッフの確保など、準備すべきことが数多くあります。さらに、良質なコンテンツを提供し続けるのは難しく、メール配信に四苦八苦する企業も少なくありません。では、BtoB企業でメールマーケティングを実践するに当たり、どのようなポイントを押さえ、どのようにコンテンツを企画すればよいのでしょうか。その勘所を紹介します。

【目次】


メールを使って見込み顧客を商談まで導く

「インバウンドマーケティング」は、顧客や見込み顧客から「見つけてもらうこと(get found)」に注力するマーケティング手法。マス広告、電話営業など、企業側から一方的に働きかける手法「アウトバウンドマーケティング」と対比したコンセプトです。

インバウンドマーケティングの具体的なプロセスは、Webサイトやブログ、ソーシャルメディアなどを通じて自社を見つけてもらい、見込み顧客を獲得、そのリードを育成して顧客になってもらうのが一般的です。では、Webサイトなどで獲得した見込み顧客を、有効案件化する役割は誰がどのように担うのでしょうか。

見込み顧客を獲得してから、実際の商談へとつなげるために有効なツールが「メール」です。メールには、「低コストで多くの人に向けた情報発信ができる」「効果検証が容易にできる」といったメリットがあります。こうした特長を活かして、見込み顧客の興味や導入意向を高め、商談化を狙ってください。


BtoB企業メール活用における3つの注意点

メールを使ったマーケティングにおいて、特にBtoBビジネスの場合、注意すべき点として次の3つが挙げられるでしょう。

(1)業界の特性や商慣習を意識する

BtoBビジネスでは決算期が近くなると、年度内に予算を消化しようとして、製品やサービスの導入検討が活発になる傾向があります。また、そもそも商談のタイミングは利用する製品やサービスの契約期間などの事情から、検討時期が決まっているケースがほとんどです。

決算に間に合うよう短期間で納品できる製品やサービスをメールで案内したり、Webアンケートなどを組み合わせ、次回の導入、検討タイミングを設問項目に盛り込むといった施策が考えられます。

(2)商材の特性を考慮する

企業向けの製品やサービスは購入まで時間がかかり、商談が長期化することが少なくありません。さらに、次の引き合いや商談機会までかなり時間がある場合でも、継続的に顧客(または見込み顧客)とコミュニケーションを取る必要があります。

仮に、商談のタイミングではなくても、自社のノウハウや導入事例を紹介したり、セミナーなどの案内をメールで行ったり、実際の商談前に発注意向を高めるような取り組みも検討してください。

(3)担当者との接点を保つ

一定期間、取引のないクライアントでは、知らない間に担当者が退職していたということも起こりえます。こうしたケースでも、定期的にメールマガジンを配信していれば、配信エラーになった送信先を、その都度確認することで、担当者の退職にも気づけます。後任の担当者と、いち早くコンタクトを取って、商談機会の発掘も期待できます。


コンテンツは「お役立ち系」と「コミュニケーション系」

実際にメールマガジンを発行しようと検討を始めると、どのようなコンテンツにすべきなのか悩んでしまう方も多いでしょう。そこで、メールマガジンに掲載するコンテンツ例を紹介します。

◎5種類の「お役立ち系」コンテンツ

「お役立ち」と銘打つくらいですから、メールを受け取っている人たちが「どんな情報を提供したら喜ぶのか」から考えましょう。もちろん自社製品やサービスの内容も取り上げるべきですが、ユーザー視点に立った企画が重要です。

(1)業界の最新動向

業界のトレンドや展望について、できるだけ客観的な情報を発信しましょう。リサーチが可能であれば、調査データに基づくコンテンツも検討してください。

(2)カタログ、技術資料ダウンロード

認知拡大や自社サイトへの誘導を目的にするだけでなく、ユーザーの反応を詳細に分析して、今後のマーケティング活動の参考にしましょう。

(3)導入事例

顧客の生の声を活用して、自社の技術力やサービス品質の高さをアピールします。購読者に対しては、事例企業が抱える課題に共感してもらうことが大切です。

(4)FAQ(よくある質問)

実際の質問は、顧客のニーズや課題そのものと言えますから、ユーザーにとっても関心が高い内容になります。

(5)ブログやコラム

形式化、定型化しづらい情報は、一回で読み切れるようなコラム記事として構成します。

◎3種類の「コミュニケーション系」コンテンツ

ブログやSNSなどと近い感覚ですが、「会社や社員の素顔が見える」コンテンツも効果的です。メールの場合、親しみを感じてもらうことで、開封率を向上させようと、担当者名義でメールを発信する例も少なくありません。

(1)社員インタビュー

プライベートな家庭の話題や仕事の失敗談など、普段の業務では語れない内容を紹介てはどうでしょうか。

(2)展示会レポート

まじめな展示会レポートだけではなく、出展準備のウラ話や後日談、他社ブースの紹介などを現場目線で記事にします。

(3)セミナーレポート

当日の様子やセミナー内容を紹介するのはもちろん、アンケート結果や参加者の反響を加えてもよいでしょう。


メールを作成、配信する際に注意すべきこと

メールを配信する際、もちろん中身は大事ですが、開封するかどうか、中身を見てくれるかどうかは「件名」で決まります。「自分の業務に関連する」「業務改善につながりそう」「業界知識が増える」など、仕事に関連した有益な情報が知りたいという受け手の立場に立って件名を考えましょう。

日々受信する膨大な量のメールの中から、「自分に有益だ、関係がある」と思ってもらわなければ、開封してもらうことすら難しい実情があります。以下に、効果的なタイトルをつくるためのポイントを挙げました。これらのポイントを意識して、件名を考えたり、再確認してみてください。

  • メリットやメッセージを明確に
  • 数字を使って、効果などを具体的に示す
  • ストーリーがわかるようにする

例えば、「開発現場の業務効率化につながるサービスを紹介!」というタイトルでは、内容が漠然としており、どんなメリットがあるかも把握できません。これを、「【事例紹介】開発リードタイムを20%短縮し、残業時間も20時間カットの秘策とは?」などとすると、メールの内容が、件名を読むだけでわかるのではないでしょうか。

【配信時間】

より多くの購読者にメールを開封してもらうには、購読者が席にいてメールを読む時間帯に配信することが大事です。同じ内容のメールを、朝、昼、晩などに分けて配信し、クリック率を測定して、最適な配信時間を把握しましょう。

【誤送信や設定ミスなどに注意】

メールの誤送信は、顧客の信頼失墜につながるため、配信リストの精査や配信オペレーションなどには細心の注意を払ってください。

【PDCAサイクルを回す】

クリック率などの購読者の反応を定期的にチェックし、件名やコンテンツ、配信時間などを改善することで、さらに効果を高める工夫を行いましょう。また可能であれば、メールから自社サイトに来た一人ひとりのユーザーが、どのような行動をしているのかも検証してください。これによって、より細かな顧客のニーズや実像が明確になるはずです。


面倒でもPDCAサイクルを繰り返す

以上、BtoB企業がメールマーケティングを行う際のポイントやコンテンツ例、注意点を紹介しました。実際に運用が始まったら、「効果検証が容易にできる」というメールの強みを最大限に活かして、PDCAサイクルを繰り返してください。それが面倒なようでいて、確実に成果向上につながる方法だと思います。