BtoB企業のコンテンツ活用では“ゴールデンルート”構築を目指す

近年、Webマーケティングの手法として、注目を集めているのが「コンテンツマーケティング」。ユーザーにとって有益なコンテンツを提供することでサイトに訪問してもらい、見込み顧客との関係性を築き、最終的にはコンバージョンにつなげるという考え方です。BtoBサイトに「向いていない」「成功させるのは困難」などとも言われる中、どのような点に注意して構築、運用すれば、コンテンツマーケティングを成功に導けるのでしょうか。

コンテンツは「量から質」の時代になっている

コンテンツマーケティングとは、文字通りコンテンツに主軸を置いたマーケティング手法。従来のプッシュ型マーケティングとは違い、「ユーザーに見つけてもらう」ことを狙ったインバウンドマーケティングにおける実践方法の一つと言えるでしょう。

BtoBビジネスでは、顧客の購買プロセスが長期間にわたっていたり、ニッチな商品を取り扱っていたりと、プッシュ型の広告やWebマーケティングでは効果が出づらいという課題がありました。

一方でコンテンツマーケティングは、「大きな予算をかけずに実施できる」「少数のユーザーでもリーチしやすい」などの特長があります。そのため、気軽に導入を決めた企業もあるかもしれません。

ただ、実際にコンテンツマーケティングに取り組んでみると、「どんなコンテンツを作れば良いか分からない」という壁に、多くの担当者が直面します。そのため、まずは記事やコンテンツを増やそうと躍起になる例もあるでしょう。

確かに、コンテンツを増やせば増やすほど、サイトへの自然検索流入が増加した時期がありました 。2012年から2013年ころ、コンテンツマーケティングが認知され始めたタイミングでは、ブログを書くなどして「とりあえずコンテンツ作成してみる」といった企業が現れます。当時は、コンテンツマーケティングに取り組む企業がまだ少なかったこともあり、記事やコンテンツの量を増やすだけで集客が期待できました。

しかし現在では、検索のアルゴリズムも変化しており、単に「コンテンツを増やすだけ」では検索流入は見込めなくなっています。それはコンテンツの量的な面だけではなく、「ユーザーにとって有益なコンテンツを提供しているか」という質的な面が、検索順位の最も重要な指標になっているからです。コンテンツは「量から質」の時代に変わったと言えるでしょう。


目的が不明確だと「コンテンツ作成」が目的化する

「量から質」の変化によって、運用の難易度も高まっています。特に陥りがちな失敗は、目的を明確にしないままコンテンツマーケティングを実施してしまうことです。目的を設定しないまま運用を始めてしまうと、「成功か失敗か」の評価基準も定まりません。

コンテンツマーケティングは取り組んでも、すぐに結果が出づらく、継続的に続けることで徐々に成果につながるという特徴もあります。目的を設定していないと、徐々に「コンテンツ作成」が目的化してしまい、ユーザーにとって有益で、役に立つコンテンツが作れなくなってしまいます。

特に外部ライターなどに依頼して進める場合は、注意が必要です。担当者が目的を明示せず、ディレクションも不足気味、コンテンツの編集方針もライター任せ…。すると方向性の定まらないコンテンツばかり増え、記事の品質が保てなかったり、サイト全体でまとまりがない状態になってしまいます。

そもそも「コンテンツの質」は数値化しにくく、PDCAが回しづらいという側面もあるでしょう。となると、どうしてもPV数(閲覧数)の多寡や担当者の好き嫌いで質を評価してしまい、客観的な判断、分析による改善アクションが難しくなります。


コンバージョンにつながる“ゴールデンルート”を見出す

この「質を意識したコンテンツマーケティング」の重要性は、BtoBでもBtoCでも変わりません。一方でBtoBならではの注意点も存在します。たとえば、面白おかしい話しやバズるネタをコンテンツ化して、多くのユーザーに閲覧してもらっても、見積もり依頼や問い合わせのようなコンバージョンに結びつきづらいのです。

集客という点だけで見れば、成功かもしれませんが、単にユーザーが面白がっているだけだと、本来見てもらいたい製品やサービスの情報に触れてもらうのは難しく、当然訪問数が増えてもコンバージョンにつながりません。

BtoBビジネスでは、必要とする製品やサービスがない限り顧客になりませんから、顧客に成り得る層に絞り込んだコンテンツ設計が不可欠です。しかし多くの場合、顧客のニーズ分析に基づいてコンテンツを設計するのではなく、作成できそうな、作りたいコンテンツから着手してしまう現実があります。

結果として「人はそれなりに集まったても、製品紹介などのビジネスに関するページに行かず、コンバージョン数は増えない」といった状況に陥りがちです。集客用コンテンツと、製品情報といったコンバージョン用コンテンツが、それぞれで離れ離れになってしまっているのです。

コンテンツで集客を図り、コンバージョンにつなげるには、「面白くて有益なコンテンツでユーザーに来てもらい、製品情報といったビジネスページに遷移させて、コンバージョンにつなげる」といった“ゴールデンルート”を設計、構築する必要があります。

思い付きでコンテンツを作成するだけでは、ユーザーは当然希望通りに行動してくれません。そのためにも、しっかりと導線設計を行って、自分たちが立てた仮説を検証し、問題があれば改善していかなければならないのです。


<著者プロフィール>

矢野 嵩之

矢野 嵩之(やの たかゆき)
2016年4月入社、美容系Webメディアのライター・編集者としてコンテンツ作成に携わる。その後、新規事業のWebマーケティング担当、オウンドメディア運営担当を経て、現在はBtoB企業サイトのWebコンサルタント業務に従事する。