米国のスタートアップ企業が実践するBtoBマーケティングの手法とは?

今回はコンテンツマーケティング支援を行っている株式会社イノーバの代表取締役CEO 宗像 淳さんに記事を寄稿いただきました。

マーケティング先進国である米国では、多くのスタートアップ企業B2Bマーケティングに積極的に取組んでいる。これらは、インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングなどと呼ばれ、各社が、企業ブログ、ホワイトペーパー、オンラインセミナー等の様々な手法を駆使して、見込み客の獲得を行っている。今回は、米国のスタートアップ企業および、日本でも大きな成功をおさめているセールスフォース・ドットコム社の具体例を紹介しつつ、B2Bマーケティングの最新トレンドを紹介しよう。

※この記事は旧ブログ「INBOUND marketing blog」から移行したものです。

株式会社イノーバの代表取締役CEO 宗像 淳さん

【目次】


企業ブログでユーザーを集めるバッファー

まず、最初にバッファー(Buffer)の事例をご紹介しよう。バッファーは、ソーシャルメディアへの投稿を自動で行うソフトを提供している会社である。リリースしてから1年弱で7万人のユーザーを獲得し、日本でのユーザーも多い。しかもたった2名でソフトウェアを開発し、ユーザー獲得をしたのだから驚きだ。

その秘訣は、企業ブログである。自社のサイト内にブログコーナーを開設、毎日記事を投稿している。それらの記事は、TwitterやFacebookでシェアされて多くの読者を集め、前述の7万ものユーザー数の獲得につながった。

彼らは、ブログ記事の拡散のためにFacebookやTwitterを活用している。Facebookのいいね数は2万、Twitterのフォロワー数は18万と、B2B企業としては異例の多さだ。彼らは毎日ブログ記事を執筆し、FacebookやTwitterを通じて拡散させることで、ファンの囲込み、見込み顧客化を図っている。

興味深いのは、ブログの記事テーマだ。当初は「Twitterのフォロワーの増やし方」とか、「Facebookのファンの増やし方」など、自社のサービスに関連性の強いテーマを中心に記事を書いていたそうだ。ところが読者の反応が今一つだったので、柔軟にテーマを広げていった所、記事も「バズり」やすくなり、多くの読者を獲得するに至ったという。現在、同ブログの記事テーマは、仕事術、ライフハック、ライティング、UI/UX、顧客サポート、ビジネス全般と多岐にわたっている

企業ブログというと古臭く感じる方も居るかもしれない。しかし、米国のB2Bスタートアップでは、ブログを書いて見込み顧客を集めるのは、もはや当たり前となっているのだ。


人事担当者向けの情報提供を行うエンテロ

次に、エンテロ(entelo)社の事例を紹介しよう。彼らは、Facebookやセールスフォース等の企業向けにエンジニアの採用をサポートするソフトウェアを提供している会社だ。

エンテロ社が運営する人事担当者向けの情報サイト「リクルーター・アカデミー」

彼らは、エンジニア採用に悩む人事担当者に向けた、リクルーター・アカデミーという情報サイトを開設し、エンジニア採用のベストプラクティスをまとめたホワイトペーパーを多数公開している。「エンジニアにメールでコンタクトする時のコツ」や、「エンジニアが転職を開始する時のシグナルとは?」などと、採用担当者なら読んでみたい情報が満載だ。

エンテロ社は、ホワイトペーパーのダウンロード時に、会社名、氏名、メールアドレスなどの情報登録を義務づけている。資料をダウンロードした人に、フォローアップのメールを送って、製品のデモを行うためだ。実際、私が資料をダウンロードした際にも、5分後に営業からメールが届き、さすが米国のスタートアップだと感心させられた。

このように、ホワイトペーパーのダウンロードから見込み客を獲得し、オンラインのデモなどを通じてクロージングへと持っていくのが、米国式のB2Bマーケティングの常套手段である。


わずか1ヶ月間で10,000リードを獲得したセールスフォース・ドットコム社

クラウド型のCRMソリューションを提供するセールスフォース・ドットコム社(以下、セールスフォース)。米フォーブス誌が選ぶ「世界で最も革新的な企業」ランキングにて3年連続第1位を獲得している同社ではマーケティングにも常に最新の手法を取り入れ、めざましい成果をあげている。

セールスフォースではコンテンツマーケティングに取り組むにあたって”90:10ルール”にのっとっているという。発信するコンテンツの9割は顧客の課題解決につながるもので、自社の製品/サービスの話は1割程度に、というスタンスだ。

このルールに基づいて、同社ではゼロから作るオリジナルコンテンツ、キュレーション型コンテンツ、ユーザーからの投稿型コンテンツなど様々なタイプのコンテンツに対し最適なSEO施策を施し、さらにソーシャルメディアを梃子に使うことでサイトへのアクセスを前年同月比で80%向上、ソーシャルメディアにいたっては2,500%という凄まじいアクセス増を記録した。

その結果、6,500件のメルマガ新規登録と10,000件のEbookダウンロードを獲得することに成功したのだ。


成功の秘訣は「売り込みではなく顧客の利益が第一」という姿勢

他にも、より高度な施策を行っている企業もある。例えば、シェアスルー(Sharethrough)社は、ネイティブ・アドカンファレンスという業界関係者を集めたカンファレンスを自ら主催しているし、インバウンドマーケティングを提唱するハブスポット社は、マーケター同士が情報交換するためのオンラインコミュニティを運営したり、ウェブサイトを診断するためのツールをウェブ上で無料公開したりしている。彼らが重要視しているのは、製品やサービスを売り込むのではなく、顧客が必要としている情報を提供し、顧客の課題解決を助ける事だ。


日本でも有効なコンテンツマーケティング

日本でも一部スタートアップ企業を中心にコンテンツマーケティングが盛り上がっている。ECで海外販売を行うためのソフトウェアを提供しているデジタルスタジオ社は、ブログやオンラインセミナー、ホワイトペーパーなどを活用し、営業人員ゼロでビジネスの拡大に成功している。また、ウェブサイトを翻訳するツールを販売する八楽も、企業ブログを活用し見込み客を獲得している。弊社でも、これまでに300本程度のブログ記事を執筆し、大手企業などの問合わせを得る事が出来ている。日本でもコンテンツマーケティングは有効なのだ。

日本企業は、従来、営業マンに新規開拓を任せる事が多かったが、これを機に、営業プロセスのウェブ化を推し進めてはどうだろうか?対人営業を中心としたアプローチでは商圏が狭い上に、新規の取引先を効率的に開拓する事は難しい。しかし、米国式のB2Bマーケティングを取り入れれば、日本中、あるいは、世界中をターゲットにビジネスを展開する事が可能になるのだ。大いに夢が広がるのではないだろうか?是非、挑戦して頂きたい。

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